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幻の味 深夜、繁華街をさまよっていた私たちは、かなり酔っぱらっていた。 「どこですか先輩、その伝説のラーメンってのは? もう眠いっすよ」 「この角を曲がった先だ。あ、あった、あった」 前回は長い行列であきらめた。特製スープの湯気が香る店内に入ると、お客さんはみな一心不乱に食べている。夢にまで見たラーメンだ。 やっと順番がきた。席に着いて注文する。 少し時間がかかりますよと言われた。 「すいません。ラーメンがきたら起こしてください」と、座った途端、後輩はつっぷして寝てしまった。しょうがないやつだな。 ようやくラーメンが運ばれてきた。私はワリバシを割ると、後輩に声をかけた。 「おい、起きろ!」 その声で起きたのは私だった。 (東京新聞:2015年1月25日 入選作品) |